TeamCNE

省エネレースチームのぶろぐです

電装系アップデート2

さあ、前回に引き続き技術ネタを放出します。

前からもお知らせしている通り電気系2大アップデートその2は自作モーターコントローラです。

 

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外観

現在では多くのチームが高効率ブラシレスモータを使用しており、我々のチームでも採用していますが、ブラシレスモーターはモーターコントローラとセットじゃないと動きません。ミニ四駆などに使用されるモーターは電池と直結で動きますが、理屈としてはブラシ(整流子)がプラスとマイナスの方向を自動で切り替えています。一方、ブラシレスモータではブラシがついてなく、トランジスタをON,OFFさせて三相交流を作り出して動かしています。つまりブラシモータでは駆動が簡単だけどブラシによる抵抗や寿命がある、一方ブラシレスモーターではブラシがないのでより高効率駆動できるが専用の制御ユニットが必要ということです。

 

ほとんどのチームはモーターコントローラは市販されているものを使用しているチームが多いのですがそこに注目し、オリジナルのモーターコントローラを作ってみようと思ったわけです。動作するまでいくつもの苦労話がありますが、今回は技術ネタなので端折ります。

 

制御方法は一般的に多く採用されている120度矩形波通電です。ソーラーカーなどではベクトル制御が用いられることもありますがエコランでは扱いやすさなどからこちらのほうが多いです。この方式は電気角120度ごとについた3つのホールセンサーからモーターの位置情報を割り出してその位置に対応したトランジスタを動作させる方式で比較的簡単に制御できることからいろんな場所で使用されています。ホールセンサはキットモーターに付属しているものを使用しました。速度指示については可変抵抗をスロットルとし、スロットル開度をAD変換で読み込んでPWMデューティーを変化させています。

 

ちなみにPWM制御もよく使われる制御方法でスイッチのONとOFFの比率を変化させることで実効電圧を変化させる方法でLED照明などに使われています。

 

ここまでは一般的な制御ですがさらにオリジナリティを加えることにしました。

 

1つ目は相補PWMです。こちらはPWMを絞っているときに効果が出てくるものです。通常PWMを絞っているときは循環電流が発生し、MOSFETの寄生ダイオードを通過するときにわずかに損失が発生します。そこで上段FETがオフの間、下段FETをオンさせることで下段FETに流れる循環電流による損失を抑える方法です。一見素晴らしい方式ですが当然リスクもあります。もし仮に上段と下段のFETが一瞬でも同時にオンになってしまったら貫通(ショート)してしまうわけです(試作品でも何個かFETが貫通して死んでます)。これを防ぐためにデッドタイムというのをを設けます。このデッドタイムが短ければ短いほど相補PWMの効果が出てきますが同時に貫通のリスクも高まるということですね。ちなみに今回のコントローラでは下段FETのゲート信号をプルダウンさせることでFETの電荷の引き抜き(立下り)を早くしています。

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ゲート信号の様子(ピンクが上段FET、黄色が下段FET)

 

2つ目は回生制御です。モーターは無負荷回転数を超えると発電機として動作し、回生電流が発生します。しかし、実際には下り坂などでしかそのような状況が起きないわけです。そこでコントローラのFETのスイッチングパターンに一工夫することでモーターの誘起電圧を昇圧させ、無負荷回転数以下の状況でも回生駆動をできるようにしました。CQ出版社のインバータキットではスイッチを押すことで回生制御が始まりますが今回は速度指示同様に可変抵抗を用いて回生制御の強度もコントロールできるようにしました。

 

3つ目は進角制御です。前回もちらっと紹介しましたが、ホールセンサーの位置を進角方向にずらすことで少しだけ多く電力を使用して回転数があげれることができます。この制御は特徴があって進角を進めていくとモーターの効率のピーク電流が大電流側に移動していきます。このような特性を生かして単純なスピードアップだけでなく鈴鹿などの高低差があるコースでは戦術も広がるわけです。実際にモーターの回転中にホールセンサーを動かすことはできないのでマイコンのタイマー機能でモーターの位置情報を先読みして転流動作しています。

 

追加で現在パワー基盤を作り直して電流制御も組み込んでいる途中です。電流制御はもてぎなどの平坦なコースで威力を発揮できるので早く実現させたいと思っています。

 

と、こんな感じで仕様について簡単にまとめてみました。まだまだMOSFETの選定やゲート駆動回路などいろいろなお話がありますが、また少しずつまとめていきます。