TeamCNE

省エネレースチームのぶろぐです

パワー基板編


さぁ気づけば12月突入ですね。

今回は前回紹介したモーターコントローラのドライブ回路の備忘録です。

 

前回ちらっと書きましたが基板は二段構成で上段が制御基板(5V系)、下段がパワー基板(24V系)になってます。最初のころは一つの基板にまとめていましたが二段構成のほうがいろいろやりやすかったのでこうなってます。

 

パワー基板の構成は単純で基本的にはスイッチング素子であるFETとFETを駆動させるゲートドライバーICで構成しています。

 

工学系以外の人は何それ状態だと思うので軽く説明します。

FETとは電界効果トランジスタ(Field effect transistor)と呼ばれる半導体の一種でPNP型とNPN型の2種類があります。

 

現在では半導体はシリコン系が多く使われています。シリコンは価電子が4個でシリコン同士が結合すると共有結合により自由電子が存在せず電気的中性を保ちます。これを「真性半導体」と呼びます。ここに3価のホウ素やガリウムをわずかに加えると共有結合する際に正孔が生成されます。これを「p型半導体」と呼び、逆に5価のリンやヒ素などをわずかに加えると電子が発生しこれを「n型半導体」と呼んでいます。p型半導体とn型半導体を接合させると(pn接合)半導体の基礎部品であるダイオードができます。p型には正孔が、n型には電子が多いのでダイオードは順方向には電流が流れるが逆方向には電流が流れません。発光ダイオード(LED)もpn接合からできており、電子がバンドギャップ(禁制帯)を超えて再結合する際に発するエネルギーが光の三原色である赤、緑、青の波長と対応するようなバンドギャップを持つ素材を使用しています。これを逆に応用したのがソーラーパネルになります。

 

ここではNPN型(nチャネル)のみを扱います。端子がドレイン(D)、ゲート(G)、ソース(S)の3種類がありドレインーソース間の電流をゲート端子に入力される信号で制御します。、バイポーラ(双極)トランジスタはゲート電極を電流で制御するのに対してユニポーラ(単極)トランジスタであるFETなどはゲート電極を電圧で制御します。

 

モーター駆動用などのパワーが必要な場合はMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が採用されます。MOSFETは100V以下、IGBTはそれ以上の電圧を扱う際に用いられることがおおいです。なので高圧で駆動する電車などはIGBTが一般的に使用されています。一方エコランでは高くても48V程度なのでMOSFETが採用される場合が多いです。

今回のようなモーター駆動ではMOSFETをだいたい10kHz~のPWM信号でスイッチング(オン・オフ)するような動きになります。

 

f:id:iida_ob:20201204111531p:plain 

 

MOSFETだけでも世界中には数千種類(?)と多くの中から自分の用途に合ったものを探し出さなければなりません。選定するに当たっては

・ドレインーソース間電圧(耐電圧)

・ドレイン電流(耐電流)

・オン抵抗

・ゲート電荷

(・金額)

などいろんなパラメータをみて選んでいきます。

 

FETが選定できたら次はゲートドライバの選定です。

 

モーター駆動用などのパワーFETはマイコンからの信号で駆動させるのはほぼ不可能です。そこでマイコンからの信号を受け取ってその信号通りにFETを駆動させるデバイスがゲートドライバICです。選定の際に注意しなければいけないのはICのシンク電流とソース電流です。

 

上でちらっと紹介しましたがFETにはゲートードレイン間、ゲートーソース間、ドレインーソース間にそれぞれ容量成分(コンデンサ)があります。なのでFETを駆動させる際に人間にはわからないのですがオシロスコープなどで観察すると過渡現象が起きていることがわかります。要するにスイッチング動作を早くするためには容量成分を小さくするか充電電流を増やさなければなりません。(もちろんFETをオフにするときも過渡現象が起きます)

 

なのでゲートドライバICのデータシートに記載されているシンク電流とソース電流が大きいほど大容量のFETでも駆動できるということになりますね。ちなみにCQ出版社のインバータキットに使われているゲートドライバ(Infenion IRS2186)はシンク・ソース電流が4Aあります。

 

多くのモーター用ゲートドライバではブートストラップ方式が採用されています(ゲートドライバ以外でもよく出てくる)。これは上段にnチャネルMOSFETを使用する際に必須となる方式です。

 

nチャネル型はゲート電圧がソースよりも高い電圧でないと駆動されません(pチャネルでは逆)。インバータの基本構成を下に示しますがよく見てください。駆動していない時はどのFETもオフになっているので上段のFETのソースはグランドから浮いていますね。この状態ではゲートドライバからの信号では駆動できないことになります。

 

f:id:iida_ob:20201202184558p:plain

IRS2186データシートより

そこでブートストラップの出番です。最初に下段のFETをオンにすることでブートコンデンサに充電され上段を駆動する際にその電圧を上乗せすることで駆動できるようになります(pMOSFETならこんなことしなくてもいいのだが性能はnMOSFETチャネルのほうがよい)。

 

FETとゲートドライバが決まったらあとはゲート抵抗です。ゲート抵抗は名前の通りゲート信号に挿入する抵抗のことで出力のリギングを抑えるために必要です。この抵抗値が大きすぎるとゲートの立ち上がり・立下りが遅くなり消費電力が増加しますが、小さすぎるとリギングが増えて不安定な動作になってしまいます。ここは設計者の見せどころでどこまで攻めれるかになります。(ネットなどでゲート抵抗を求める計算方法もありますがエコランでは少しのロスでも削りたいのが基本なのであてにならないことが多いです)

 

とりあえずパワー基板は簡単にこんな感じで設計していきました(プロから見るといろいろ突込みがきそうです)。僕もほぼ独学で資料やネットを漁りまくったりtry&errorをやりまくっているので形にできているのでこれが正解とは限らないです。

 

それではまた。